【質問】
自動車に追突され、首を軽く捻挫しました。そのときは軽い捻挫で済んだと思い、加害者と100万円で示談しました。
示談書には「当事者間に本示談書に定めるほか何ら債権債務のないことを相互に確認する。」との清算条項が入っています。
ところが事故後3年経ってから、自己の後遺症で首がほとんど曲がらなくなってしまい、仕事もできなくなりました。この後遺症についての損害賠償は請求できるのでしょうか。
【回答】
交通事故など、事故当時は軽い症状だと思っていても、後になって当初予期しなかった後遺症が生じることがあります。このような場合に示談後一切加害者に損害賠償を請求できないとするのは被害者にとって酷です。
昭和43年3月15日の東京高裁の判決は「交通事故の被害者が示談によって少額の賠償金をもって満足し、その余の損害賠償請求権を放棄した場合、それは示談当時予想していた損害についてのみと解すべきであって、その当時予想できなかった後遺症等が後日発生した場合には、被害者はその損害の賠償を請求することができる」と判示しています。
時効との関係も気になりますが、当初予期しなかった後遺症が発生したときは、その時点で損害を知ったというべきですから、その損害については、そのときから消滅時効が進行すると考えられます。
したがって、本件の場合、損害賠償請求が認められる余地はあります。